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ファンフィク<3> 「クローディア(下)」

(上)の続きで、後編です。完結してます。

ちょっと、我ながら砂吐きそうに甘いんですけど…(苦笑)
かな~~り、こっぱずかしいです。(爆)

すんません、でも、またしてもラブシーンには至りませんでした。
というか、どっちがいいんだろう…(笑)

どっちつかずの、ないほうがいいのかな。
それとも、思い切って突き進んでしまえ~~な感じなのかな。

私自身は、まだ迷ってます。(笑)

では、その砂吐き甘々…でもいい、という方のみ、下へお進みください。


*この話はフィクションですが、私の創作です。無断転記はお断りします。




『クローディア(2)』


 車中、CJはさっきオフィスであんな醜態をさらしたことをひどく後悔していた。
 もちろん自分がしたこと自体、一番に後悔すべきことだが、てっきり車中で色んなことを聞かれるのだろうと思っていたトビーが、隣に座ったまま一言も何も言わず、もうじきこの車は我が家の前へと着く。するとおかしな事に、自分のヒートしていた頭が冷えてきて、犯したミスに対して冷静に対応出来なかったことが恥ずかしくてたまらなくなる。
 そして、さっきまでは誰の顔も見たくなかったし、ただひたすら独りで自分と向き合いたかったのだけれど、今は無性に言い訳をしたくてたまらない。それがどんなにみっともなく恥ずかしいことだと分かっていても、独りで消化するには自分の感情の起伏は激しすぎた。

 車が停まる。車窓で切り取られた風景には見慣れた建物が、そこにあった。

「……部長は、…どうされるの?」

「そりゃぁ、もちろん戻るさ」

「……そう、…そうですよね」

 当然の答えだ。ホワイトハウスの広報部長が、そんなに暇だったら逆に驚きだ。
 CJは、せめて落胆の心情は見抜かれまいと、きわめて普通を装って車を出ようと思った。
 じゃぁ、とCJがシートベルトを外すと、トビーが彼女のほうへ顔を向け何やら少し考えた風な表情を見せた。視線が合って、CJはドアを開け、シートから立とうとしていた動作を止める。

「……だが、……DCでのキミの家に、多少の興味はあるさ。相変わらず殺風景なわりに、子供っぽいグッズが一部の空間を占めているのか?とかな」

 その返答にCJが思わず吹き出す。一気に時が昔へ戻ったような気がした。

「えぇ、…えぇ、その通りね。あなたの知ってるLAの家と、そんなに大差はないわ。寄って、確かめてくださる?」

 CJの言葉に、トビーは少し小首を傾げて「じゃあ、そうしよう」と、おどけたように言った。




 トビーは、コーヒーを口にしたあとカップをソーサーに戻すと、ソファから立ち上がって、初めて来たDCの彼女の家の居間を、どこか懐かしいものを見るようにゆっくりと歩いてみる。その様子をCJはソファに座ったまま、少し眩しい思いで目で追っていた。
 トビーがふと足を止めてキャビネットの上のものを指さす。

「これには見覚えがある」

 CJは思わず微笑んで「えぇ、あっちから持ってきたものですもの」と答えた。
 クリスタルの熊の置物はLAの蚤の市で購入したお気に入りだった。さっきのトビーの“子供っぽいグッズを置いてある”のをさっそく見つけられたみたいで、気恥ずかしさと懐かしさの入り交じった気分だった。
 そしていつの間にか、さっきまでのささくれ立った、あるいは落ち着かない気持ちが解けはじめている気がした。

「だが、これは知らないな」

 次にトビーが指さしたものが彼の陰になってよく見えず、とても無防備に、CJは立ち上がってそれをのぞき込んで、そして凍り付いた。
 暖まりかけていた身体に冷水をかけられたようで、持っていたカップを少し震えながらソーサーへと戻すと、CJはトビーの顔を見る。
 窓から夕陽が差し込んで、逆光になっていて彼の表情はよく見えなかったが、CJにはよくわかった。確信犯だ、と。
 トビーは、それがなにで、どういう意味を持っていたのかも分かっていて問うたのだ。
 CJは力無くソファにドサリと座りこみ、両手で頭を抱えるようにブロンドの髪をその指で握ると、視線を落としたまま呟いた。

「……そうでしょう、ダイバーウォッチなんて私、使わない。LAには、なかった………」

「……そうか」

「……意地悪ね、トビー…」

 苦く笑ってCJがそう呟くと、トビーは「久しぶりだな」と答えた。
 一瞬トビーが話をはぐらかしたのかと思ったが、そうではなかった。

「キミがこうしてファーストネームで私を呼ぶのは、たぶんLA以来だ」

「そう?そんなことないでしょう?」

「どうかな。私が忘れてるだけかもしれないが…」

 そう言ってからトビーは、もとのソファに戻って、もう一口コーヒーを飲むとカップをソーサーに戻してCJを見た。

「CJ、キミを慰めるのは私じゃなくても出来るさ。あるいは、仕事とプライベートは何があっても分けるのがプロだ、と叱咤するのも別に私じゃなくたっていい。それに、そんなことをキミに求めているスタッフは、少なくとも今、キミの周りには一人もいないだろう」

 CJは、相変わらず頭を抱え下を向いたまま「…えぇ、知ってるわ」と答えた。トビーは続ける。

「だが、キミは一人だと思っている。この世で、自分の心の中の孤独を理解出来るのは誰一人いないと、そう思ってるんだろう」

「…違うわ」

「自分の心に空いた穴を埋めてくれるヤツは、もういない。そうやって、排他的に周り中に壁を作っているんだろう」

「違うって言ってるじゃないっ!!」

 CJの叫びが部屋に響いた。だがそれに続く、更に彼女を追いつめる言葉はもうなく、部屋に沈黙という空気が広がった。
 そしてそのピンと張りつめた沈黙を、トビーの穏やかな声が切り取った。

「クローディア」

 はっ、と息を飲んで、CJは顔をあげる。トビーは、もう一度「クローディア」と、彼女のファーストネームを呼んだ。

「キミは反論するかもしれないが、キミが私に対して本気だったことはなかったと私は思っている」

 その言葉通り、CJは何かを言おうとして、けれどトビーに制されたため仕方なくそれを飲み込んだ。

「私には…妻がいた。お互い、それを意識しながら、意識してないふりをしていた。そうじゃなかったか?」

 CJは当惑していた。今更当時のことを持ち出すトビーの本心が分からなかったからだ。
 けれど、トビーが言ったことは取りあえずは本当だった。それでも、世の中の山ほどいるだろう不倫のカップルは、多かれ少なかれ同じような思いを抱いているのだろうから、それはある意味当然のようにも思う。

「ええ、それはそうね。ただ、あなたが私たちの関係が終わったことの原因が私にあるというのなら、それはどうかと思うわ。あなたが私の本気を疑っていたなんて心外よ。むしろあなたが私に対して本気ではなかったからこそ、こうなったのではなかったの?」

「ああ、そうだ」

 思い切り反撃を肯定されて、CJは肩すかしをくらう。

「意味もなく、昔話を蒸し返すつもりなんかないさ。ただ、キミがそう思っていても仕方がないんだ。私はあのとき、妻とこんな風になる前だったけれど、本気で別れることを考えた。キミを手放したくはなかった」

「トビー!?」

「だが、それをキミに伝えたことはなかっただろう。キミは結局は私が妻と別れられないんだと思っていたはずだ」

「…そうよ、そうだけど、だけど、なんで今になって…、そんなことを言うのよ……」

 確かにその通りだった。トビーが離婚を考えていないというのは、CJには最初から分かっていたことだったように思い出される。
 そのために、先のない自分たちの関係に、どこかほんの少しだけ距離を保っていたのかもしれない、とCJは今になって思う。
 彼から家族を奪う気など、自分にはなかった。聞き分けの良い女を気取ってみたかったからなのか、トビーが言うように本気だったことが一度もなかったからなのか、こうしてみると自分で自分のことが良く分からない。つくづく情けないと思わされる。

「そうだ、今更だ。だが、キミは今、知らなきゃいけない。彼のほかにも、少なくともキミの孤独を本気で理解したいと、…そう思うやつがいるってことを。私が、クローディアと呼んでいたことを、キミは思い出さなきゃいけない」

 -----キミが立ち止まることしか出来なくて、どっちにも進めないときには、喜んで手を貸すさ。
 -----今は、親しい友人として。


 CJは、ただ呆然として、それを聞き入れていた。
 クローディア。
 忘れていた呼び名だ。今はいない、あのひとですら、そう呼んでいたことはない。

“フルネームはなんていうんだ?”
“クローディア・ジーン・クレッグ”
“いい名だ、クローディア”

 出会った日に、トビーはそう言って、以来つき合っている間、ずっとそう呼んでいた。
 いつからか彼女の呼び名はCJと決まっていたので、そう呼ばれることはどこかくすぐったく、そして嬉しかったことが思い出される。

 CJは、熱いものが伝った頬をぐいっと拭い、笑顔を作って言った。

「親しい友人として、なの?」

「あぁ、そうだとも。不満か?」

「あなたは親しい友人に、そんな決めセリフを平気で言うの?」

「そりゃぁ、大統領の広報部長をやってるからな。決めセリフは得意中の得意だ」

「ぷっ!あっはっはっ、、、、」

 とうとうCJは心から高らかに笑った。どれくらいぶりだろうか。あの日より以前だったことだけは、間違いない。

「CJ」

「えぇ」

「大丈夫か?」

「えぇ、多分。そう努力するわ」

「キミは独りじゃない」

「えぇ、あなたがいるわ」

「いい友人として?」

「そう言ったの、あなたでしょう?」

 そう言ってまたCJが笑う。
 トビーは、「じゃあ、私は戻るよ」とソファから立ってドアに向かった。

「トビー」

 CJの呼び止めに、振り返ると、そこにCJの顔があった。
 頬に柔らかく懐かしい感触がして、「ありがとう」という声がトビーの耳に響く。

「いい友人なのは今のところは、と付け足すぞ!」

 トビーは、背中越しにそう大声で叫んで、笑って見送る彼女の部屋を後にした。

-------Fin.-------------------------------------------------------------------- 
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ファンフィク<3> 「クローディア(上)」

久しぶりのファン・フィクです。
久しぶりですが、ネタは引き続きトビーとCJです。(笑)

呟きにも書きましたが、オフィシャル本を読んで、トビーとCJって以前なにか
色々とあったって言うんで、色々ってなによ?!みたいな。(笑)

相変わらず妄想走らせて、勝手に2人をいい雰囲気にしちゃってます。
しかも、今回続きになっちゃって…(^^;;

そういうの、大丈夫なかただけ、下へお進みください。


*この話はフィクションですが、私の創作です。無断転記はお断りします。
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『クローディア(上)』



「…C.J?ねぇ、ちょっとだけこのドア、開けてくれないかしら?ジョシュが、あの…、話があるって……」

「放っといてっ!」

「……えぇ、それはよく分かってるんだけど、でもね、あの…」

 ドナが、部屋にこもってしまったCJをなんとか引っ張り出そうと話しかけるが、まったく無駄だった。

「CJ!誰もキミのことを責めてなんかないから、ほら、補佐官も怒ってなかったし………だよね?」

 途中から口を挟むジョシュだったが、最後の部分の確認をとっていなくて思わずとなりのサムに同意を求める。

「う、うん、そうそう、大丈夫。大統領にもちゃんと言ってくれるから。………だよな?ジョシュ?」

 更にサムまでもが結局ジョシュに話を差し戻す。
 その様子に、ドナがCJに聞こえないように「二人とも、ちゃんと確認してから話せないの!?」と文句を呟く。

「そ~だよ~!ほら、これをやったのがもしドナだったら、あっという間にクビだろうけど、やったのはキミなんだから!大丈夫さ!」

「……ジョシュ…」

 あまりの慰め下手ぶりにドナがあきれる。

「放っといてと言ったでしょう!」

 ガシャンッ!!

 そのとき、部屋の中からドアに何かがぶつけられ、それが割れた音がした。
 ドアの外にいたみんなは、その音に、というよりは、むしろそこまでCJが感情的に煮詰まっていたことをやっと悟った事に言葉を失った。四人が顔を見合わせ、でも、なにも口に出来ない。

 もともとはCJのミスだった。
 責められて当然のそれは、けれど誰もそんなことが出来ないと知っていた。
 NYでのあの事件が、いまだ彼女を苛み、彼女から本来の自分というものを奪っていたのを皆が知っていたからだ。
 だから、漏らしてはいけない内輪の会話を記者たちの誘導尋問にひっかかりスルリと彼女の口から出たときは、むしろダメもとで質問した記者達のほうが驚いていたが、それでも彼らはそれをニュースにする気などなかっただろう。
 一瞬場が凍り付き、それを部屋のモニターで見ていたトビーがすぐにレオに話し、記者達には音便に聞かなかった事にするよう2人が対応したが、それすらもあまり必要のあることではなかった。皆が彼女が彼女でないことを分かっていた。

 レオとトビーがやって来たとき、CJはまるで新人のように見ているだけで、なにも出来なかった。
 記者達の誘導尋問など毎度のことで、そんなものに自分が引っかかるはずもなかったのに。
 ただ自分がしたことが信じられず、自己嫌悪で吐き気がする。フラつきながら自分のオフィスにかろうじて戻ると、そのまま閉じこもってしまった。

 すると、不意に堅く閉じたままだったドアが、まるで開けるのを遠慮してるように、部屋との隙間を小さく見せた。
 ドアの外に立つ4人が、そっとその隙間に注目する。
 顔を見せたCJは、泣きはらした酷い顔をしていた。

「……ごめんなさい、悪かったわ。みんなにまで当たるなんて、アタシ、最悪ね……」

「CJ…、怪我はない?大丈夫?」

 ドナの優しい言葉にCJがわずかに微笑んで頷く。足下には卓上にあがっていたコーヒーカップの破片が落ちていた。

「今日は帰りなよ、CJ。あとはなんとかやるから」

 ジョシュの言葉にCJが元気なく、それでも少し反論した。

「…そういうわけにはいかない。この後も会見はあるし、後始末無しで放っておくわけにはいかないわ」

「会見は、こっちで誰かやるよ。…ボクは、……まぁ、やめといたほうがいいが、サムもいるし」

 そのとき、そこに割ってはいる声がした。

「そうだな。会見はサムがいいだろう。私がやってもいいが、私がやると、無駄に彼らを怒らせるのは自分でも分かってるし。もちろんジョシュは絶対にダメだが」

「ひどいな、部長」

 CJが2人のやりとりに、また少し笑みを見せた。
 トビーがもう一度「大丈夫だ。補佐官がちゃんと納めてくれた。今日は帰るんだ、CJ」と続けると、CJはまだ少し抵抗をみせたが、やがて諦めたように頷いた。

 するとトビーが思わぬ言葉を口にした。

「さぁ、行くぞ」

「…え?」

「送る」

 CJは驚いて「そんな、大丈夫よ」と笑ってみせた。
 けれどトビーに「なんだ、こんな陽も高いうちに送りオオカミでも心配してるのか?」と茶化され、更に他の4人の安心したような顔を見たら、もう何も言えなかった。
 みんなの気持ちが痛いほどに分かる。自分を心配する気持ちが。
 けれど、それすらあの事件を現実だったと裏打ちされているようで、CJには辛いことでもあった。
 みんなに心配をかけている自分を嫌悪していた。
 けれど、自分で自分自身をどうにもコントロール出来ずにいた。
 この迷いが、こんなことを引き起こしたのだと思うと、悔しさと情けなさで叫びたくなる。
 このまま今日帰るのは不本意だったが、けれどこの場の雰囲気を思えば、それが今出来る一番のことのような気がした。

「いくぞ」

 トビーの静かな促す声に、CJは「えぇ」とだけ答えると、上着とバッグを持ってオフィスを後にした。


 (続く)

ファンフィク<2> 「ワイン越しのキス」

シーズン3の、どっかの話でC.Jがトビーにお父さんの話をしている回がありましたよね。
それがどこだったか、どうしても思い出せなくて、本当は見直してから書こうと思ったんですが、そのまま書いちゃいました。(^^::

C.Jやトビーの家族構成とかがよく分からなくて、C.Jの家庭の事情とかも良く分からなくて、途中でどうしようかと思ったんですが、そこは避けて書きました。(おい!笑)

今回は大人向けというほどではない、、、ですよ、きっと。(笑)
本当は頬かデコチューくらいあってもいいかなと思ったんですが、こっぱずかしいので止めておきました。(笑)
もうちょっと親しくなる過程を、自分の中に作り上げていかないと、なんかそこまではまだ書けないわ、みたいな。(^^;;

ちなみに、私のファンフィクは、C.Jとトビーだけというわけではないです。
ただ、今はちょっとマイブームで、続けて書いてみただけなんです。

私のTWW好き原点はジョシュとドナですが、こっちは何だか思い入れがありすぎて、自分であの二人の世界をうまく書く自信がまだないので、手を出せないでおります。(笑)

*この話はフィクションですが、私の創作です。無断転記はお断りします。

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『ワイン越しのキス』



 警備の人間に軽く挨拶をして、自らの足音が耳につくくらい人の気配のない深夜、トビーは自分のオフィスへ向かった。
 非常灯を頼りに慣れた通路を歩く。そして真っ暗なオフィスの扉を開けて、彼は一瞬ギョッとした。

「…あら~、お帰り、部長~」

「C.J、こんな時間にいったい何を、……飲んでるのか?」

「えぇ、そうなの~」

 酔ってトビーの部屋のソファに寝転んで、C.Jは楽しげにそう答える。
 部屋はブラインドが降りた、その隙間から月明かりがほんの少しだけの灯りを照らしている。
 良く見ると、彼女は着替えてもいないようだった。そのまま残っていたのだろう。

「そのワインは、どうしたんだ?随分ご機嫌だな?」

 トビーが尋ねると、C.Jは子供みたいに、うふふ、と笑って「部長にはあげないわよ」と答えた。

「なんだ、独り占めか?で、なんでここに?」

「いいじゃないの、時間外なんだから~」

 甘えたような声。けれど、暗がりでやはり表情は見えないままだった。

「そりゃ酷いな。うまそうなワインを分けてもくれないくせに、キミは私のソファを占領してる」

 そうトビーが告げると、C.Jはますます楽しげな声で「わかったわよ。でもね」と言うと、ようやく寝転んでいた身体を起こしてソファに腰掛けた。

「グラスは、これしかないから、ほら、部長にあげるわ」

 C.Jはそう言って持っていたグラスにワインを継ぎ足してそれを差し出した。

「ふむ…、で、キミはもう飲まないのか?」

「ま~さかぁ~!高かったのよ、これ!」

 そう言って、C.Jはボトルを自慢げにトビーに見せると、それをそのまま口に付けてグイと飲んだ。
 だが、やはり酔っているのだろう。ワインはうまく喉を通ってゆかず、C.Jはむせて咳き込んだ。
 ケホケホと苦しげに咳き込むので、トビーはようやくC.Jの側に寄ってソファの隣に座ると、彼女の背をトントンと軽く叩く。
 C.Jは少し大袈裟に深呼吸をして、それから「大丈夫っ」と言って、またボトルに口付けようとした。
 けれど、その動きはトビーによって止められる。C.Jからボトルを取り上げて、彼はそれを足元へと置いた。

「部長…、それはアタシが自腹で買ってきたのよ。なんで取るんですか」

「……何があった?言いたくなきゃ無理にとはいわんが、ここに居たってことは、取りあえず私にじゃなくても、誰かには言いたいことがあったんだろう?」

「…なにかないと、この部屋のソファに居ちゃいけなかったかしら」

「…あぁ、困るな。何も用がなければ、だが。何かあるなら、別にかまわんよ」

 C.Jは黙った。
 そして頭を両手で抱えるようにして前屈みになると、髪をクシャリと握る。
 トビーは、それから同じように黙って彼女が何かを口にするまで待った。
 沈黙が部屋を包むが、不思議と息詰まる感じはなかった。
 月光が部屋を淡い光で包んでいるせいだろうか、とトビーはボンヤリとブラインドのかかる窓を見て思う。
 そして、やがて諦めたようにC.Jが重そうに口を開いた。

「…部長は、……お独りで怖くはない?」

「何がだ?」

「…色々と。取り残されそうだとか、そういう孤独を感じたりはしません?」

「…普段はまったく思わないがね…。まあ、一度も考えたことがないといえば嘘だろう。つまり、共に生活するものがいないという意味で言ってるんだろう?」

 えぇ、とため息まじりにC.Jは答えた。そして続ける。

「老後がどうだとか、そんなことではないの。……父が、……病気かもしれない…」

 C.Jの言葉に、そういうことか、とトビーは納得したが、黙って彼女の続きを待った。

「…といっても内臓とか外傷とかじゃないのよ…」

「…というと?」

「……酷く物忘れが激しいの…。それに最近しょっちゅう電話をくれる。今日もあったの。しかも、どうでもいいことで、よ。まるで私が仕事中だとか、そういう観念がまったくないようで…」

 アルツハイマーかもしれない、とC.Jは小さく呟いた。

「…調べてないのか?診察は?」

 彼女はそう聞かれるのを分かっていたみたいに、直ぐに、そして頑な雰囲気で首を横に何度も振った。

「彼はっ、…父は、独りでこことは遠く離れたところにいるもの…。それにもし、……本当にそうだったら…入院させなくちゃいけないかもしれない。いいえ、それだけじゃない。わたしは面倒を見れないもの、誰か付き添う人を探したりしないと…、遠くに置いておくのも心配だから、こっちの病院を探したり………だから、……だから、……」

 C.Jは、そして突然立ち上がり、強い口調で言った。

「そんなんじゃないのよっ!そんなんじゃないの!……怖いのよっ、あたし、怖いの…っ」

 顔を両手で覆って、よろめくように立つ、その細く、今は頼り無く見える身体を、トビーは横に寄り添って腕の中に抱き込んだ。
 自分の肩ごしに顔を埋めて小さく嗚咽を堪える声がトビーの耳に届く。

「…厳格な父だったわ…っ、でも、私には優しかった……、いつも、一番頼れる人だったの……なのに、……」

 トビーはC.Jの背中をゆっくりと撫でながら言う。

「…誰にでも、父親というのはそういうものだろう…。そして、そういう風に人は年をとっていく。残酷だが、どうにもできない」

「…えぇ、分かってるの…。ただ、認めるのが怖くて……、それで…、バカね、わたし…」

「あぁ、知ってたさ。今頃気付いたのか?」

 トビーのおどける口調に、C.Jは「ひどいひと」と言って彼の背中にまわしていた手で、その背を軽く叩いた。だが声は明るかった。
 それからC.Jは自ら腕を解いてトビーから少し身体を離れるように距離をとると、初めてその目を合わせて微笑んだ。
 少し泣いた瞳が柔らかい月光で輝きを見せる。
 C.Jは言った。

「…父をD.Cの医者に診せるわ。なるべく早く」

「それがいい」

 トビーが静かに答えると、彼女は「聞いてくれて、ありがとう」とひどく素直に言った。
 その返事に「いや」とだけ答えると、トビーは最初オフィスに入ってきたときのように、またC.Jから離れて彼女を見た。
 すると不意に腕の中の温度が下がったように感じられた。手のひらが薄らさむい。
 オフィスは何も寒くはないはずなのに、それはひどく不思議な感じがした。

「じゃあ、…もう帰るわね。部長、驚かせてごめんなさい」

「…いや、役にたったなら、それでいい」

「ありがとう。おやすみなさい」

「ああ。おつかれ」

 そしてC.Jはそのままオフィスを出て、帰っていった。
 トビーは天井を見つめ、ひとつ大きなため息を吐いた。そして自分も帰らなくては、と思って動かした脚に何かが当たり、それがカタンと倒れる。C.Jが残したボトルだった。
 トビーはそれを手にとって雑に詰めたコルクを抜くと、クイッとボトルを口につけて飲んだ。
 ワインのアルコールは、そんなに強くはない。けれど、どうしてか喉が焼け付くような気分だった。
 ドサリ、と再びソファに腰を降ろす。
 なんだかすっかり帰宅する意欲が飛んでしまったように感じられた。

「…今夜はここで過ごすか…」

 ゴロリとソファに寝転がると、トビーはやがて静かにその目蓋をとじた。

ファンフィク<1> 「ターキーの調理法」

私が作ったファン・フィクションです。(恥)
気が乗ったら、今後も書くかも。
基本的に、難しいのは分からないので、私が書くのは日常話になると思います。


取りあえず1本目はC.Jとサイモンとトビーの話。
ドラマの設定からは少し離れていて、少し大人向け(笑)です。
ヤバい描写とかはないですが、嫌いな方は読まないほうがいいです。
(さすがに性描写は書きませんが、一歩手前とかあるかも~)
理解して下さる方のみ、読んで下さい。m(_ _)m

私、C.Jとサイモンも好きなんですが、C.Jとトビーの組み合わせも好きなんです。

一応、この話は私のオリジナルであり、著作権は私にあるので、無断転記はお断りします。

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『ターキーの調理法』



 無機質な、どこにでもある携帯の着信音が遠くに聴こえた。
 最初は夢の中かと勝手に思い込もうとしたが、やがて鳴り続けるそれは本物であるとようやく認めざるをえず、C.Jはベッドサイドにあるはずのそれを、横着に手を伸ばして探した。
 それはなかなか手に捕まってはくれなくて、何度もサイドテーブルの上をパタパタと叩くようにまさぐっていたが、やがて諦めて顔を向けようとしたときに、その音は不意に消え、変わりにすぐ隣から聞き覚えのある声が耳にはいった。

「…ドノバンだ…、………だれだ?そっちは?」

 C.Jはゆっくりと声のする隣へと目を向ける。サイモンの携帯だったのか、と寝ぼけ眼で見ると、彼はやがて苦笑いをして持っていた携帯をC.Jに差し出す。

「キミの携帯だったよ」

 爽やかな笑顔が決まりが悪そうに少し崩れている。「誰?」と問いかけるが、サイモンは黙って携帯をC.Jの手に握らせた。

「…もしもし、クレッグですが……」

 一瞬間が空いて、相手からの声が聴こえた。

『…私だ。すまなかったね、休みの朝早くに』

「部長…だったんですか。あ、いいえ、別にかまいません。それより、何かあったんですか?」

 正直、昨晩は寝るのが遅かったせいか、まだ頭がスッキリしない。それに休みを想定して今日はサイモンと出かける約束をしていた。何か問題が持ち上がったのでなければいいが、と少し心の中でため息まじりに聞いた。

『…いや、…その、……いや、やめておこう、悪かった。じゃあ、良い休みを』

 そう言って、唐突にその電話は切れた。C.Jは呆然として、慌てて横になっていた上半身を起こし、すぐにリダイヤルをした。
 呼び出し音が少し長く鳴る。そして、躊躇ったようなトビーの声が聴こえた。

「ちょっと、部長、何なんですか。気になるじゃないですか。勝手に切らないでください!」

『…あー、いや、ホントにたいしたことじゃなくてだね…』

 トビーの煮え切らない言葉に、少しイラつく。

「いいから言って下さい。もうすっかり目が冴えてしまいましたよ、部長。こんな切られかたされたら、かえって気になります!」

 C.Jの勢いに押されてトビーは一瞬黙ったが、やがてポツリポツリと言葉を選ぶように続けた。

『…昨晩、冷凍のターキーを解凍したんだ』

「……、それで?」

『あー、それで今日は休みだし、久しぶりに料理でもしようかと…』

「…そうですか、それはよろしいわね。それで?」

『だが、いかんせん、普段何もやらないものだから、暇だったら手伝って貰えないかと思ったんだが、どうやらキミは今日は忙しそうだし、それで解凍したターキーが無駄になるのも何だから、そうだな、適当な調理法でも教えて貰えないか』

 今度はC.Jが途中口を挟まないようにとでも思ったのか、一気にそこまで早口でまくしたてた。

「…つまり、部長は私に家に来て欲しかったんですか?」

『いや、だから、それはもういいよ。ただ、料理法がだな……、もう、いい。適当に調べるよ。悪かった』

「部長!ちょっと、待って。切らないで!」

『………』

 隣で会話を聞いていたはずのサイモンはいつの間にかシャワーを浴びているのか、バスルームのドアが少し開いていた。

「……調理法を教えたら、そのターキーの一部は私にもいただけるのかしら?」

『……悪かったよ、C.J、本当に』

「いただけるんでしょう?ターキーのサンドウィッチは、最高においしいのをご存じ?」

『……あぁ、もちろん知ってるさ。作ったことがないだけでね』

「わかったわ、ついでだからつけ合わせも色々作りましょう。わたしを呼んだのが大正解だったと、明日、ホワイトハウスの皆に宣伝して貰わなくっちゃ。いえ、そうだわ、今夜はたしか夕方からヤンキースの放送があるでしょう?サムも呼びましょう」

『あいつはどうせヨットじゃないか?』

「いいえ、今日は家でたまった掃除をするとか言ってたもの。呼び出しましょうよ」

 受話器の先から、また少し躊躇うような沈黙が流れた。そして絞り出すような声でトビーは言う。

『…C.J、本当にいいのか?サイモンと約束があるんだろう?』

 その時、バスルームから出てきたサイモンとC.Jの目が合った。
 サイモンは、ただ黙って笑顔を見せながら頷いていた。

「いいのよ。どうせ彼は今夜、夜勤なの。夕方から出掛けてしまうし。わたしも一人の夕食はイヤだったからちょうどいいわ」

 サイモンにウィンクをしながらそう電話口に告げると、彼は笑ってC.Jに指で作った銃を向ける仕種をした。

『そうか?じゃあ、待ってるよ。ゆっくりでいい。わたしはサムや、もし居たらだが、補佐官やジョシュやドナにも声をかけてみるさ』

「分かったわ。じゃあ、必要なものを買って行くわね。それじゃ、あとで」

 携帯の通話ボタンを消し、C.Jが口を開こうとしたけれど、そこはそのままサイモンに塞がれた。
 手をまわされた腰に甘い感触を感じながら、ゆっくりと唇を離すと、サイモンは苦笑しながら呟いた。

「それで、ぼくは何時から放ったらかされるんだ?」

「あら、でも夜勤は本当じゃない。私を放って3時には出ていく予定だったくせに」

 サイモンはもう一度軽くキスをして、C.Jの耳もとで囁いた。

「せめて朝食は食べさせてくれるんだろうね?」

 C.Jはいじわるな笑い顔をして答えた。

「それは食事の前に、もう一度わたしを楽しませてくれるって約束してくれたら考えるわ」

 

                ~終わり~

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himekatww

Author:himekatww
日本語ドラマタイトル「ザ・ホワイトハウス」、原題「The West Wing」の個人的応援ブログです。

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