スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ファンフィク<3> 「クローディア(下)」

(上)の続きで、後編です。完結してます。

ちょっと、我ながら砂吐きそうに甘いんですけど…(苦笑)
かな~~り、こっぱずかしいです。(爆)

すんません、でも、またしてもラブシーンには至りませんでした。
というか、どっちがいいんだろう…(笑)

どっちつかずの、ないほうがいいのかな。
それとも、思い切って突き進んでしまえ~~な感じなのかな。

私自身は、まだ迷ってます。(笑)

では、その砂吐き甘々…でもいい、という方のみ、下へお進みください。


*この話はフィクションですが、私の創作です。無断転記はお断りします。




『クローディア(2)』


 車中、CJはさっきオフィスであんな醜態をさらしたことをひどく後悔していた。
 もちろん自分がしたこと自体、一番に後悔すべきことだが、てっきり車中で色んなことを聞かれるのだろうと思っていたトビーが、隣に座ったまま一言も何も言わず、もうじきこの車は我が家の前へと着く。するとおかしな事に、自分のヒートしていた頭が冷えてきて、犯したミスに対して冷静に対応出来なかったことが恥ずかしくてたまらなくなる。
 そして、さっきまでは誰の顔も見たくなかったし、ただひたすら独りで自分と向き合いたかったのだけれど、今は無性に言い訳をしたくてたまらない。それがどんなにみっともなく恥ずかしいことだと分かっていても、独りで消化するには自分の感情の起伏は激しすぎた。

 車が停まる。車窓で切り取られた風景には見慣れた建物が、そこにあった。

「……部長は、…どうされるの?」

「そりゃぁ、もちろん戻るさ」

「……そう、…そうですよね」

 当然の答えだ。ホワイトハウスの広報部長が、そんなに暇だったら逆に驚きだ。
 CJは、せめて落胆の心情は見抜かれまいと、きわめて普通を装って車を出ようと思った。
 じゃぁ、とCJがシートベルトを外すと、トビーが彼女のほうへ顔を向け何やら少し考えた風な表情を見せた。視線が合って、CJはドアを開け、シートから立とうとしていた動作を止める。

「……だが、……DCでのキミの家に、多少の興味はあるさ。相変わらず殺風景なわりに、子供っぽいグッズが一部の空間を占めているのか?とかな」

 その返答にCJが思わず吹き出す。一気に時が昔へ戻ったような気がした。

「えぇ、…えぇ、その通りね。あなたの知ってるLAの家と、そんなに大差はないわ。寄って、確かめてくださる?」

 CJの言葉に、トビーは少し小首を傾げて「じゃあ、そうしよう」と、おどけたように言った。




 トビーは、コーヒーを口にしたあとカップをソーサーに戻すと、ソファから立ち上がって、初めて来たDCの彼女の家の居間を、どこか懐かしいものを見るようにゆっくりと歩いてみる。その様子をCJはソファに座ったまま、少し眩しい思いで目で追っていた。
 トビーがふと足を止めてキャビネットの上のものを指さす。

「これには見覚えがある」

 CJは思わず微笑んで「えぇ、あっちから持ってきたものですもの」と答えた。
 クリスタルの熊の置物はLAの蚤の市で購入したお気に入りだった。さっきのトビーの“子供っぽいグッズを置いてある”のをさっそく見つけられたみたいで、気恥ずかしさと懐かしさの入り交じった気分だった。
 そしていつの間にか、さっきまでのささくれ立った、あるいは落ち着かない気持ちが解けはじめている気がした。

「だが、これは知らないな」

 次にトビーが指さしたものが彼の陰になってよく見えず、とても無防備に、CJは立ち上がってそれをのぞき込んで、そして凍り付いた。
 暖まりかけていた身体に冷水をかけられたようで、持っていたカップを少し震えながらソーサーへと戻すと、CJはトビーの顔を見る。
 窓から夕陽が差し込んで、逆光になっていて彼の表情はよく見えなかったが、CJにはよくわかった。確信犯だ、と。
 トビーは、それがなにで、どういう意味を持っていたのかも分かっていて問うたのだ。
 CJは力無くソファにドサリと座りこみ、両手で頭を抱えるようにブロンドの髪をその指で握ると、視線を落としたまま呟いた。

「……そうでしょう、ダイバーウォッチなんて私、使わない。LAには、なかった………」

「……そうか」

「……意地悪ね、トビー…」

 苦く笑ってCJがそう呟くと、トビーは「久しぶりだな」と答えた。
 一瞬トビーが話をはぐらかしたのかと思ったが、そうではなかった。

「キミがこうしてファーストネームで私を呼ぶのは、たぶんLA以来だ」

「そう?そんなことないでしょう?」

「どうかな。私が忘れてるだけかもしれないが…」

 そう言ってからトビーは、もとのソファに戻って、もう一口コーヒーを飲むとカップをソーサーに戻してCJを見た。

「CJ、キミを慰めるのは私じゃなくても出来るさ。あるいは、仕事とプライベートは何があっても分けるのがプロだ、と叱咤するのも別に私じゃなくたっていい。それに、そんなことをキミに求めているスタッフは、少なくとも今、キミの周りには一人もいないだろう」

 CJは、相変わらず頭を抱え下を向いたまま「…えぇ、知ってるわ」と答えた。トビーは続ける。

「だが、キミは一人だと思っている。この世で、自分の心の中の孤独を理解出来るのは誰一人いないと、そう思ってるんだろう」

「…違うわ」

「自分の心に空いた穴を埋めてくれるヤツは、もういない。そうやって、排他的に周り中に壁を作っているんだろう」

「違うって言ってるじゃないっ!!」

 CJの叫びが部屋に響いた。だがそれに続く、更に彼女を追いつめる言葉はもうなく、部屋に沈黙という空気が広がった。
 そしてそのピンと張りつめた沈黙を、トビーの穏やかな声が切り取った。

「クローディア」

 はっ、と息を飲んで、CJは顔をあげる。トビーは、もう一度「クローディア」と、彼女のファーストネームを呼んだ。

「キミは反論するかもしれないが、キミが私に対して本気だったことはなかったと私は思っている」

 その言葉通り、CJは何かを言おうとして、けれどトビーに制されたため仕方なくそれを飲み込んだ。

「私には…妻がいた。お互い、それを意識しながら、意識してないふりをしていた。そうじゃなかったか?」

 CJは当惑していた。今更当時のことを持ち出すトビーの本心が分からなかったからだ。
 けれど、トビーが言ったことは取りあえずは本当だった。それでも、世の中の山ほどいるだろう不倫のカップルは、多かれ少なかれ同じような思いを抱いているのだろうから、それはある意味当然のようにも思う。

「ええ、それはそうね。ただ、あなたが私たちの関係が終わったことの原因が私にあるというのなら、それはどうかと思うわ。あなたが私の本気を疑っていたなんて心外よ。むしろあなたが私に対して本気ではなかったからこそ、こうなったのではなかったの?」

「ああ、そうだ」

 思い切り反撃を肯定されて、CJは肩すかしをくらう。

「意味もなく、昔話を蒸し返すつもりなんかないさ。ただ、キミがそう思っていても仕方がないんだ。私はあのとき、妻とこんな風になる前だったけれど、本気で別れることを考えた。キミを手放したくはなかった」

「トビー!?」

「だが、それをキミに伝えたことはなかっただろう。キミは結局は私が妻と別れられないんだと思っていたはずだ」

「…そうよ、そうだけど、だけど、なんで今になって…、そんなことを言うのよ……」

 確かにその通りだった。トビーが離婚を考えていないというのは、CJには最初から分かっていたことだったように思い出される。
 そのために、先のない自分たちの関係に、どこかほんの少しだけ距離を保っていたのかもしれない、とCJは今になって思う。
 彼から家族を奪う気など、自分にはなかった。聞き分けの良い女を気取ってみたかったからなのか、トビーが言うように本気だったことが一度もなかったからなのか、こうしてみると自分で自分のことが良く分からない。つくづく情けないと思わされる。

「そうだ、今更だ。だが、キミは今、知らなきゃいけない。彼のほかにも、少なくともキミの孤独を本気で理解したいと、…そう思うやつがいるってことを。私が、クローディアと呼んでいたことを、キミは思い出さなきゃいけない」

 -----キミが立ち止まることしか出来なくて、どっちにも進めないときには、喜んで手を貸すさ。
 -----今は、親しい友人として。


 CJは、ただ呆然として、それを聞き入れていた。
 クローディア。
 忘れていた呼び名だ。今はいない、あのひとですら、そう呼んでいたことはない。

“フルネームはなんていうんだ?”
“クローディア・ジーン・クレッグ”
“いい名だ、クローディア”

 出会った日に、トビーはそう言って、以来つき合っている間、ずっとそう呼んでいた。
 いつからか彼女の呼び名はCJと決まっていたので、そう呼ばれることはどこかくすぐったく、そして嬉しかったことが思い出される。

 CJは、熱いものが伝った頬をぐいっと拭い、笑顔を作って言った。

「親しい友人として、なの?」

「あぁ、そうだとも。不満か?」

「あなたは親しい友人に、そんな決めセリフを平気で言うの?」

「そりゃぁ、大統領の広報部長をやってるからな。決めセリフは得意中の得意だ」

「ぷっ!あっはっはっ、、、、」

 とうとうCJは心から高らかに笑った。どれくらいぶりだろうか。あの日より以前だったことだけは、間違いない。

「CJ」

「えぇ」

「大丈夫か?」

「えぇ、多分。そう努力するわ」

「キミは独りじゃない」

「えぇ、あなたがいるわ」

「いい友人として?」

「そう言ったの、あなたでしょう?」

 そう言ってまたCJが笑う。
 トビーは、「じゃあ、私は戻るよ」とソファから立ってドアに向かった。

「トビー」

 CJの呼び止めに、振り返ると、そこにCJの顔があった。
 頬に柔らかく懐かしい感触がして、「ありがとう」という声がトビーの耳に響く。

「いい友人なのは今のところは、と付け足すぞ!」

 トビーは、背中越しにそう大声で叫んで、笑って見送る彼女の部屋を後にした。

-------Fin.-------------------------------------------------------------------- 
スポンサーサイト

Comment

非公開コメント

プロフィール

himekatww

Author:himekatww
日本語ドラマタイトル「ザ・ホワイトハウス」、原題「The West Wing」の個人的応援ブログです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。